エクスポージャーとリスク許容度は、別のものです

インデックス投資

投資を20年やってきて、割と最近になって使えるようになった考え方があります。

エクスポージャーです。

簡単に言えば、「いくら持っているか」と「いくらまでなら耐えられるか」は別の話、ということです。

分けて考えられるようになると、自分がいまどれだけリスクを取っているのかを、数字で数えられるようになります。

つみたていぬ

ややこしい言葉やけど、分けたら楽になるで。

この記事の目次

  1. 2つの言葉を、分けて考えます
  2. 自分のエクスポージャーを数えてみます
  3. 残念なお知らせがあります
  4. 若いうちは、エクスポージャーを高くしやすい
  5. 自分は、気づくのが15年遅れました
  6. では、どこまで上げられるのか
  7. 世帯で見ると、もう一段上げられます
  8. まとめ

1. 2つの言葉を、分けて考えます

まず、整理します。

言葉意味何を表すか
エクスポージャーいま値動きにさらしている金額いまの事実
リスク許容度どこまでの損失に耐えられるかの上限これから先の限界

エクスポージャーは「事実」、リスク許容度は「限界」です。

どちらも金額で言えますし、割合(%)でも言えます。

実際に動かしたほうが、早いです

言葉で説明するより、自分の数字で動かしたほうが早いと思います。

下に、現金とリスク資産(株式)だけの、シンプルなポートフォリオのシミュレーターを置いています。感覚で掴んでみてください。

初期値は、オルカンを想定した実質リターン5%・リスク17% にしてあります。FIREシミュレーターと同じ数字です。

1年でどこまで下がりうるかは、正規分布を仮定した場合、教科書的には μ − 2σ、つまり「期待リターンから、リスクの2倍を引いた値」で見積もります。

ひとつだけ、先に。

入れるのは「総資産」です。 証券口座の中の金額ではありません。貯金も債券も、全部足した額を入れてください。

エクスポージャーは、資産全体で数えないと意味がありません。

証券口座の中だけで見ると、実際より高いリスクを取っているように見えてしまいます。

株式の比率(残りは現金) 80% 株 / 20% 現金
期待リターン
リスク(σ)
悪い年に減る額

現金はリターン0%・リスク0%として計算しています。リターンは実質(インフレ調整後)です

「悪い年」がどれくらいの頻度で来るか。 正規分布を仮定すれば、20年に1回くらいです。

μ − 2σ は、95%の確率でこれより上に収まるという線だからです。100年のうち95年はこれより上、残り5年はこれより下、という意味になります。

ただし、これはあくまで正規分布を仮定した場合の目安です。

そして、これは「最大損失」ではありません。 もっと下がる年もあります。

しかも株価の下落は、正規分布が想定するより極端なほうに寄ります。 リーマンショックもコロナショックも、理屈の上の「20年に1回」を超えていました。

この損失額を見て「無理だ」と思うなら、株の比率が高すぎます。

リスク許容度を見直して、エクスポージャーを減らす行動に移すべきです。


2. 自分のエクスポージャーを数えてみます

実際の数字でやってみます。2023年12月時点のわが家です。

総資産7,770万円
うち投資している資産5,222万円
そのうちSPXL(3倍レバレッジ)572万円

当時、S&P500の3倍の値動きをするETFを持っていました。

3倍の商品は、日々の値動きの3倍で数えます

ここが、リスク資産比率との違いが出るところです。

SPXLは572万円ですが、値動きで見れば、その3倍にあたります。

日々の値動きに対するエクスポージャーを単純化して考えると、こうなります。

572万円 × 3 = 約1,716万円ぶん

SPXLが目指しているのは「その日のS&P500の値動きの3倍」です。長期で3倍のリターンになる商品ではありません。ここでの3倍は、あくまで日々の値動きにどれだけさらしているかの目安です

なので、株式のエクスポージャーはこうなります。

SPXL以外の投資資産4,650万円
SPXL(3倍で換算)1,716万円
合計約6,367万円

それでも、1倍を超えていませんでした

これを総資産で割ります。

6,367万円 ÷ 7,770万円 = 約0.82倍

3倍の商品を持っていたのに、全体では1倍を超えていませんでした。

理由は単純で、貯金や債券がそれなりにあったからです。

レバレッジ商品を持つことと、レバレッジをかけることは、別です。 ここを混同すると、自分がどれだけリスクを取っているのか分からなくなります。

分母を間違えると、こうなります

1章に書いたとおり、分母は総資産です。上の例で確かめてみます。

分母SPXLの割合
投資資産(5,222万円)11%
総資産(7,770万円)7%

同じ572万円なのに、見え方が1.5倍違います。

証券口座の中だけを見ていると、自分は高いリスクを取っていると思い込んでしまいます。 実際には、貯金がクッションになっています。


3. 残念なお知らせがあります

20年やってきて、気づいたことがあります。

長期・低コスト・分散されたインデックス投資では、最後に大きな差になるのがエクスポージャーです。

身も蓋もない話です。

インデックス投資には、再現性があります

広く分散された、低コストのインデックスファンド。オルカンでもS&P500でもいいのですが、これらの成績は、誰が買ってもほぼ同じになります。

同じ日に同じ額を買えば、隣の人と自分の結果は同じです。うまい人と下手な人の差が、ほとんどつきません。

これはインデックス投資の最大の長所です。ただ、裏を返すとこうなります。

同じものを同じだけ持てば、結果もほぼ同じ。だから、差がつく場所が絞られてきます。

差がつく大きな要因は「いくら晒したか」です

リターンが同じなら、増えた額を決めるのは元の大きさです。

差がつくか
銘柄選び(広く分散されたインデックスの中で)ほぼつかない
買うタイミング長期では、ほとんどつかない
エクスポージャーここが一番大きい

もちろん、結果を変えるものは他にもあります。投資期間、手数料、税金、為替、そして積立を続けられるかどうか。 どれも無視できません。

ただ、そこを揃えたうえで最後に残った差が、いくら晒したかでした。

自分の資産の大きさを分けたのは、エクスポージャーをどこまで上げられたかでした。

自分の資産のうち、どれだけをリスク資産に振り分けられるか。 ここがよほど大事でした。


4. 若いうちは、エクスポージャーを高くしやすい

誤解を恐れずに書きます。

若いときほど、エクスポージャーは高くしやすいと思っています。

理由は単純で、これから稼ぐ力があるからです。

働いて入ってくるお金が、この先何十年ぶんもあります。相場が下がっても、給料から入れ直せます。取り返す時間も、原資もある。

だから順番は、こうなります。

  1. 最速で生活防衛資金を貯める
  2. 残りは、リスク資産に振り分ける

生活防衛資金だけ確保して、残りをリスク資産に振り分ける。

生活防衛資金の考え方はみんな生活防衛資金貯めようぜに書きました。

もちろん、耐えられなければ意味がありません。 1章の計算機で、自分の額を確かめてからにしてください。


5. 自分は、気づくのが15年遅れました

ここまで書いておいて、なんですが。

これに気づいたのは2020年です。 投資を始めて、すでに15年経っていました。

遅い。

しかも当時は、エクスポージャーという言葉すら知りませんでした。 「現金を持ちすぎているんじゃないか」と感覚で思っただけです。

気づいていないと、変な方向に行きます

その結果どうなったかというと、レバレッジ商品に手を出していました。

コロナショックのとき、S&P500の3倍の値動きをするETFを買っています。

いま考えれば、やることはひとつでした。資産全体を見て、エクスポージャーを上げられるところまで上げる。 それだけです。

現金は1,000万円以上ありました。

資産全体で上げきれていれば、レバレッジ商品は要りませんでした。

そのときの記録は、コロナショックで3倍レバレッジを買った話に全部書きました。


6. では、どこまで上げられるのか

ここで効いてくるのが、リスク許容度です。上げられる上限を決めるのは、こちらです。

設計の順番としては、リスク許容度が先です。

「どこまでの損失に耐えられるか」を決めてから、「じゃあ、いくら晒すか」を決める。逆にすると、耐えられない量を持ってしまいます。

相場ではなく、収入が止まったときで測っていました

2020年のコロナショックのとき、毎日ノートをつけていました。相場が落ちていく最中に、こう書いています。

もし収入がなくなるような事になっても、3年で切り抜けれる状態

貯金は MAX 250万では残しておく

「あと何%下がったら買う」ではありません。

「収入が止まっても3年もつか」 で決めていました。相場の話が一言も出てきません。

どこまで買えるかは、生活のほうで決まっていました。

リスク許容度は、チャートを見ても出てきません。家計簿を見ないと出てこない数字です。

リスク許容度は、動かせます

固定ではありません。上げることもできます。

そして、上げられると分かるのは、実際に晒してみたあとです。

コロナのときは、資産がかなり沈みました。ところが通り抜けてみると、思ったより平気でした。

そこで「現金を持ちすぎているんじゃないか」と考え直して、リスク許容度を引き上げ、そのぶんエクスポージャーを増やしました。

やったことは単純で、入金額を増やしただけです。

年間の入金額
2019102万円
2020280万円
2021460万円

2年で4.5倍です。特別なことは何もしていません。

エクスポージャーを増やす一番簡単な方法は、現金を入れることです。

ただし、上限があります

現金の比率を下げていけば、エクスポージャーは総資産に近づきます。ただし、現金がゼロになったところが上限です。

自分のお金だけで1倍を超えることはできません。 レバレッジ型のETF、信用取引、証券担保ローン。手段は違っても、どれも自分のお金以上の値動きを作るものです。

自分は使いません。現金があるうちは、現金を入れるほうが早いからです。


7. 世帯で見ると、もう一段上げられます

ここまでは、自分ひとりの資産で見てきました。

ただ、実際に暮らしているのは世帯です。配偶者の収入や資産まで含めて考えると、話が変わります。

ダブルインカムになって、融通が効くようになりました

うちの場合、嫁が働くようになりました。

そうすると何が変わるか。収入が2本になります。

片方が止まっても、もう片方が残る。同じ生活防衛資金でも、意味合いがまったく違います。

収入が2本あると、耐えられる量そのものが増えます。

その結果、自分の資産のエクスポージャーは、かなり上げられました。

ただし、世帯の形によります

これは誰にでも当てはまる話ではありません。

  • 配偶者の収入が安定しているか
  • 配偶者自身の資産はどうか
  • 家計をどこまで一緒にしているか

答えは家庭ごとに変わります。

ただ、少なくとも自分ひとりの資産だけで上限を決めるのは、もったいないかもしれません。世帯で数え直すと、上限が動くことがあります。

世帯で資産をどう考えるかは、不動産投資をやらない理由の後半にも書きました。


8. まとめ

  • エクスポージャーは事実、リスク許容度は限界。別のものです
  • 分母は総資産。 証券口座の中だけで見ると、リスクを高く見積もりすぎます
  • 長期・低コスト・分散のインデックス投資なら、最後に大きな差になるのはエクスポージャーです
  • 若いうちは生活防衛資金を確保して、残りをリスク資産へ。上限は家計簿から決まります
  • 世帯で見ると、上限が動きます

自分は、これに気づくのに15年かかりました。

そのあいだ、銘柄を選び直したり、タイミングを計ったり、レバレッジ商品に手を出したりしていました。どれも、大した違いを生んでいません。

効いたのは、リスク資産にいくら振り分けたか。それだけでした。

まずは自分のエクスポージャーを数えるところから。数えられると、増やすのも減らすのも、判断が楽になります。


投資は自己責任でお願いします。この記事は特定の金融商品を推奨するものではありません。

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