“4%ルール”が4.7%に?生みの親の新説を、積立20年の投資家が調べてみた

最近、けっこう面白い話を知りまして。

あの「4%ルール」の生みの親本人が、「実はもっといける。4.7%だ」という本を出したみたいなんです。

投資の出口戦略として必ず聞く「4%ルール」。その正体は、前回整理しました(→前回の記事。ベンゲンさんの論文から、トリニティ・スタディが裏付けた数字ですね)。

で、その”生みの親”——ウィリアム・ベンゲンが、2025年の新刊でこう書いてるらしい。「あの4%は保守的すぎた。もっと使っていい」と。

ただし、これは4%ルールが4.7%に置き換わったわけじゃないんです。あくまで、生みの親が出してきた”新説”、ということです。

(しかも原著は未邦訳で私も未読。海外の要約・解説をもとにまとめた話です)

今日は、この”4.7%“という新説を、紹介します。

つみたていぬ

「4%は保守的すぎた。もっと使え」——生みの親、まさかの上方修正。
貯めグセの私には、ちょっといい話。

今回の話のもとになってるのが、この本です。

『A Richer Retirement: Supercharging the 4% Rule to Spend More and Enjoy More』 ウィリアム・ベンゲン(William P. Bengen)著/Wiley・2025年/邦訳なし

タイトルを直訳すると「より豊かなリタイア——4%ルールを”強化”して、もっと使い、もっと楽しむ」。サブタイトルが、素敵すぎますね。

で、その中身。要点を先にまとめると、こうです。

この本が言ってること

ひと言でいうと——「4%は保守的すぎた。条件を整えれば、もっと使えるし、人生も楽しめる」

  • 安全な取り崩し率を、4%から4.7%に引き上げ(過去平均なら約7%、推奨は約5%)
  • 理由は、分散を増やしたから(株の種類+短期債を追加)
  • 最大の敵は、暴落じゃなくインフレ
  • 退職時の「割高度(CAPE)」と「インフレ」で率を調整(FIREや割高局面では、控えめに)

① 新説の数字は、実は”3段階”

前回の記事で、「最悪のケースでも30年もつ率は、約4%」と書きました。

ベンゲンは今回、その”最悪ケース基準”を、もっと分散させたポートフォリオで計算し直したんです。すると——4%が、4.7%まで上がった。

(※なぜ分散で上がるのかは、②でくわしく)

新しいベンゲンの数字は、3段階で見ると正確です。

数字意味
4.7%(分散を増やした配分での)最悪ケースの最低ライン
約7.1%過去の平均的なタイミングなら、これくらい使えた
約5%今の現実的な推奨スタート
  • 4.7% … 一番固い最低ライン。歴史上もっとも条件が悪かったタイミングで退職しても、これなら30年もった
  • 約7.1% … 逆に、運が良ければ年7%以上いけた年も多い。多くの人は、4%でガマンしすぎてた
  • 約5% … 「4.7は固すぎ、7は楽観しすぎ。間をとって5%を目安に」が、ベンゲンの今のおすすめ

要するに、4%は”最悪ケース専用”の数字で、普通はもっと使っていい——というのが、新説の核です。


② 肝は「分散」と「インフレ」

要点は上のとおりですが、自分が「なるほど」と思った”肝”を、2つ。

なぜ4.7%に上げられたのか=分散を増やして計算し直したから

ベンゲンが率を上げられた理由は、分散を増やしたからです。

  • 昔(1994年):米国の大型株+中期国債、ざっくり2資産
  • 新しい本:米国の大型・中型・小型・超小型・先進国株+短期債、と種類を追加(株55/中期債40/短期債5)

資産の”種類”を増やして、より幅広く分散させた。それだけで、最悪ケースの最低ラインが4%から4.7%へ底上げされた、というわけです。

暴落も怖いが、もっと厄介なのがインフレ

暴落も、もちろん怖い。ただ、ベンゲンが今回「最大の敵」に挙げるのは、暴落じゃなくてインフレのほうなんです。

理由はシンプル。4%ルールは「定額(毎年インフレ分だけ増やして取り崩す)」だから。インフレの分だけ、生活費(取り崩す額)が増えていく。 しかも、一度上がったら下がらないんですよね。たとえば、年300万だったのが年々増えて、年360万とかになっていくわけです。

つまり、インフレの分だけ毎年の取り崩しが膨らんで、資産の減りが早まる。これがじわじわ効いてくる——だからベンゲンは”最大の敵”と呼ぶわけです。


③ 退職する”その日”で、率が変わる

この新説で、もう一つ面白いのが、「一律◯%」をやめたこと。退職する日の状況で、取り崩し率を上げ下げするという考え方です。

見るのは2つ。

  • 株の割高度(シラーCAPE)… 割高なときに辞めると、これから伸びにくい → 率を下げる。割安なら、上げてよい
  • インフレ見通し … 高そうなら、率を下げる

ざっくり言うと、「割高・高インフレのときに辞めるなら控えめに。割安なら強気でいい」。退職のタイミング次第で、4.7%にもなるし、もっと低くもなる、というわけです。

で、これを踏まえると——FIREみたいに退職期間が長い人(40〜60年)は、4.7%じゃなく4.3%くらいに落とすのがベンゲンの推奨。そして今みたいに株が割高な局面で辞めるなら、やっぱり控えめにしておくのが無難。つまり”4.7%“は、誰でも・いつでも、の数字じゃないんです。

※ シラーCAPE=株が「割高か割安か」を測るモノサシ(株価 ÷ 過去10年の平均利益)。高いほど割高です。


④ でも、鵜呑みにはしない

「4.7%、いけるやん!」と飛びつきたくなりますが、いくつか冷静に。

  • これは米国の過去データの話。日本に住む自分には、為替リスクも税金も、別でついてくる
  • 株と債券のバランスが前提。オルカンやS&P500を株100%で持ってる人が、そのまま当てはめるのは要注意(→前回の記事でくわしく)
  • そして繰り返しですが、これは”置き換え”じゃなく、生みの親が出した新説にすぎない。確定した新ルールではないんです

要するに——最高のヒントではある。でも、最後は自分の状況に合わせて使うもの。数字だけ持ってきて鵜呑みにすると、足元をすくわれます。


⑤ で、これを知って自分が思ったこと

この新説を知って最初に思ったのは——「うすうす感じてたけど、やっぱりもうちょっと取り崩してもよさそうやな」でした。やっぱりそうやんね、と。

前回の記事では「自分は臨機応変にやる」と書きました。それは今も変わらないんですが、改めて自分の資産状況を眺めると——iDeCoや年金も含めて考えると、“増やすフェーズ”と”使うフェーズ”が、もう同時進行で始まってるのは、たぶん確実なんですよね。

しかも、住んでるのは日本。インフレは進んできてるとはいえ、他国と比べるとまだ緩やかな印象(あくまで個人的な体感ですが)。

そう考えると、「使っていく方向に、そろそろ舵を切る」のは、わりと正解なのかもしれない。

——で、ちょうど自分は、VYMの分配金を”使う練習”として使い始めたところ(→お金を使う練習:VYM分配金の使い道)。だからこの新説、自分にとってはちょうど旬でした。「もっと使え」と、背中を押された感じ。

あと、調べてて「お!」となったのが、2つ。

ひとつは——ベンゲン本人も、結局「臨機応変にやれ」と言ってること。さっきの2要因モデル(割高度やインフレで率を変える)って、要は「一律◯%じゃなく、状況で動かせ」ってこと。前回、自分が「臨機応変にやる」と書いたのと、同じ方向だったんですよね。生みの親と一緒やん、と地味に嬉しい。

もうひとつは——「シラーCAPE」という指標を、初めてちゃんと知れたこと。こちとら20年投資やってますけど、やっぱり知らんことだらけですね。

とはいえ、すぐ何かを変えるわけじゃないです(そもそも前提が違うので)。ただ、近い将来、投資信託の取り崩しの練習も視野に入れる——そのくらいの心づもりにはなりました。


まとめ:4%は、4.7%になった……かもしれない

ベンゲンの新説、ざっくり振り返ると:

  • 分散を増やしたら、安全な取り崩し率が4%から4.7%に上がった(推奨は5%くらい)
  • 最大の敵は、暴落よりインフレのほう
  • ただし、これは”置き換え”じゃなく、あくまで新説。米国データ・株100%前提じゃない点には注意

要するに——「4%は保守的すぎた。もっと使っていい」。これが生みの親の、30年越しの新しい答えです。

自分の結論は、前回と同じ「臨機応変」。でも、生みの親に「もっと使え」と背中を押されたのは、けっこう大きい。少しずつ”使う方向”に舵を切っていくつもりです。

そして、そもそもの「4%ルールって何?」が気になった人は、前回の記事をどうぞ。本家の正体(ベンゲンvsトリニティ・定額と定率・株と債券の比率)を、しつこく整理してます。

👉 「4%ルール」私が勘違いしていた話【みんな知ってた?】


投資は自己責任でお願いします。この記事は特定の金融商品を推奨するものではありません。

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